2016年 02月 03日
少し写真が多くなり、不気味な幼虫の姿も多く掲載してありますが、ヒメアカタテハの越冬についてです。 12月も中旬になると見かけるヒメアカタテハの成虫の姿もまばらになる。 12月下旬にヨモギの様子を見て歩くと、あちこちにヨモギの葉をつづったヒメアカタテハの巣が目につく。 この場合は複数の幼虫がいそうな感じ。 右側の巣が新しそうに見え、糸のくくりも荒そうに見えたのでそっと開いてみた。 予想した通り幼虫がいて、黄色い3つの点列があるし、体長も1㎝くらいはあるから3齢幼虫だろうか。 この巣は幸いその後きちんと補修され、幼虫も元気な様子だった。 産卵された卵はどうなったかと探すけど、特に印はつけていないのでわからない。 ヨモギの葉が小さく折れている葉をよく見ると、小さな幼虫がいた。 体に特に斑紋もないので、1齢幼虫かもしれない。 こちらは黄色い斑点列があるから、2齢、あるいは3齢だろう。 先ほどの3齢に比べると明らかに小さいから、2齢の可能性が高そうだ。 このころになると、ヨモギの葉の上で休んでいるような5齢幼虫が見つかる。 そしてこのころの幼虫には、かなりの確率で寄生蠅の卵が産み付けられているのが見つかる。 この幼虫は盛んに摂食しているけど、頭部周辺にはこの写真だけでも7卵が産み付けられていた。 この幼虫は、太くて不気味で、最初はヒメアカの幼虫には見えなかった。 それでもヒメアカの幼虫には間違いないだろう。 頭部周辺だけでなく、尾部にも産み付けられている。 産み付けられた卵が、幼虫によって取り除かれないように、頭部周辺に産むことが多いということだけど、蠅は頭部と尾部を認識しているのだろうか。 このケースでは脱皮寸前の4齢に産み付けられている。 この場合は脱皮してしまえば無駄になってしまうことになる。 幼虫の多い場所を見てみると、ヨモギの周囲を活発に歩き回る蠅が目につく。 表面だけでなく、ヨモギの中にまで潜り込んでいるから、これが寄生蠅だろう。 ヒメアカタテハの寄生蠅については、こちらに写真がある。 アカタテハにも同様の寄生蠅(ホオヒゲハリバエの一種)がいるそうなので、きっとその近縁種だろう。 かなりの数の蠅がいたので、この時期には終齢幼虫がある程度の数いるのだろう。 卵が付いていたのは、見つけた幼虫の4割くらいに相当した。 この時期、びっくりするくらい大きな幼虫がいた。(左隣にいるのはたぶん3齢幼虫) 逆にびっくりするほど小さな5齢幼虫もいた。 普通の幼虫の半分くらいしかない感じ。 "蝶・雑記"によれば、一般の5齢幼虫の半分くらいの日数で6齢になる場合があるということなので、この幼虫がその5齢で、上の大きな幼虫が6齢かもしれない。 先ほどの尾部に寄生蠅の卵を産み付けられていた幼虫も、不気味なくらい太っていたから、6齢だったのかもしれない。 幼虫はどうなっているか気にしてみると、きれいだけど生活臭の乏しい巣が見つかる。 中に幼虫がいる巣は、幼虫が葉の表面を食べていくので、外から見ても食べられた部分がわかる。 それに対して、あまりそういった食痕のない巣もある。 この巣は大きな1枚の葉をきれいにつづってあり、中にはどんな幼虫がいるんだろうと思って注意したけど、数日たっても何の動きもない。 中で脱皮しているのかと思って様子を見ていたけど、あまり動きがないので、我慢できなくなって巣を開いてみたら、干からびた幼虫が出てきた。 大きさから、3齢か4齢くらいだったと思う。 この時はがっかりして写真を撮るのを忘れてしまった。 また、別の巣では、一見して中に幼虫はいそうだけど、何かおかしいと思われる巣があった。 かわいそうだけど、巣を開いてみたら、中には死んで干からびた幼虫がいた。 体に小さなダニが付いているのが気になるけど、多分死んだ後についたものだろう。 こういった生活臭のない巣は時々見つかる。 中齢以上の幼虫の耐寒性はあまり強くない感じがする。 1月に入って新成虫が出てきた。 ここ数年、この時期の新成虫を見ていて気になるのは、見つけた翌日にはもう見かけることがない。 他所に移動してしまうのか、この時期の夜の寒さに耐えられないのか、どちらなんだろう。 大寒の頃になるとヨモギも枯れて幼虫の巣も見つけるのが難しくなる。 それでも2月2日に探してみたら、いくつかの巣が見つかった。 3齢以上の幼虫が作るような巣はほとんど見つからない。 かわいそうだけど、見つけた巣の中に幼虫がいるのか確認するために一つの巣を開いてみた。 中にいたのは体に目だった模様がないから1齢幼虫のようだ(大きさは3mm位) 弱々しく動いていたから生きてはいるようだ。 下の巣は開いていないから幼虫がいるかはわからないけど、右側の葉には糞が転がっているからたぶん中にいるだろう。 いるとしたら2齢くらいかな。 ここまでの観察で推測できるのは以下の点。 (1)1月から2月にかけて観察できる新鮮な成虫は、秋に産卵された卵が、12月初旬にかけて蛹化したものが羽化したものだろう。 (2)春に観察できる個体(自宅近くでは、4月中旬から5月に見られる)は、晩秋に産卵された卵が、卵か若齢幼虫で越冬したものだろう。 これらの点は、今のところは推測だけど、今後少しずつでも記録を積み上げていきたい。
by dandara2
| 2016-02-03 10:08
| 越冬
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Comments(10)
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yurinBD at 2016-02-03 23:17
寄生蠅は晩秋・冬は少ないのかとイメージで思い込んでいましたが、冬でもかなりの数がいるのですね。
ヒメアカタテハの越冬には、寒さや乾燥、寄生蠅など様々な困難があることがよく分かりました。 無事に春を迎えるヒメアカタテハの割合は、相当に低い印象を受けました。 こうした継続的な観察は大切ですね、私もまたヒメアカタテハの幼虫を探してみます。
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dragonbutter at 2016-02-03 23:51
貴重な観察ですね。
寄生バエとの静かな戦いがよくわかりました。 中齢以上の幼虫の耐寒性はあまり強くないとの推測ですが、 アサギマダラでも齢数の高い越冬幼虫ほど生存率が低いようですから(日本蝶類生態図鑑) ヒメアカタテハも同じ傾向なんでしょうね。
こんなに沢山卵を産みつけられたのではヒメアカタテハの幼虫もたまったものではありませんね。
正直これほど熾烈な現状だとは想像していませんでした。 関連サイトで紹介されていた寄生蠅の産卵管にも驚嘆です。 これでは全滅ではないかと思ってしまうのに、40%くらいという産卵率にも興味を覚えました。 寄生蠅にも意外と盲点があるのか、たまたまなのか、何か調整システムがあるのかわかりませんが面白いものです。 貴重な監察報告に感謝です。
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ダンダラ
at 2016-02-04 16:04
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yurinさん、おっしゃるように冬でもたくさんの蠅がいてびっくりしました。
意識してみると、ヨモギの周辺にはこの蠅が数匹あちこち探すように動き回っていたので、幼虫が生き延びるのも大変でしょうね。 秋口には産卵シーンを一番よく見かけたヒメアカタテハの数が、春先には他のモンキチョウやベニシジミほど多くはないのは、こういったことに原因があるんでしょうね。 ヒメアカタテハの幼虫が見つかるといいですね。
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ダンダラ
at 2016-02-04 16:09
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dragonbutterさん。ありがとうございます。
アサギマダラの幼虫も齢数が高いと生存率が高くないのですね。 いろいろな要因があるでしょうが、いずれも完全にその土地での越冬に適応しきれていないんでしょうね。
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ダンダラ
at 2016-02-04 16:16
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naoggioさん、これだけの数寄生されていたら、寄生した方もきちんと栄養が足りるのかなと思ってしまいますね。
寄生蠅の産卵管については私もびっくりしました。 知っていたらもう少し粘って決定的なシーンを狙ったんですが、この時はあくまで推測で撮影しましたので、粘りが足りませんでした。 寄生率が40%というのは、あくまでざっと確認しただけですので、実際はどうなのかはよくわかりません。 蠅はかなり執拗に巣の多い場所を探し回っていたので、その場所ではもっと寄生率は高いんだと思います。
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clossiana at 2016-02-05 09:27
皆さんと同じ感想です。ヤドリバエってとんでもなく凄いのですね。。度肝を抜かれました。
こういう寒い時期であれば寄生昆虫の脅威からは免れられるのでは?と思い込んでいましたが、 とんでもないですね。ただ寄生率が4割位というのがちょっと救いです。 寄生率とすれば低すぎるような感じですので恐らく今シーズンのヒメアカタテハの増加?に間 に合わなかっただけかな?という気がします。もしヒメアカタテハが増えれば次のシーズンには ヤドリバエの方も増えているのでしょうね。 ご紹介を頂いたホオヒゲハリバエにもびっくりでした。幼虫の体表面に卵を産付するだけなら、 あの長い産卵管は何の為?と思いましたがタテハ類の幼虫のように棘を持っているタイプには 有効なんだろうと思っています。 いずれにしましても大変に素晴らしいものを見させて頂きました。
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ダンダラ
at 2016-02-05 21:19
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clossianaさん、撮影しているときはこれがもしかしたら寄生蠅かなという程度の知識しかなかったので、あまり感じませんでしたが、おっしゃるようになんだかすごいですね。
産卵管がこんなに長いのは、きっと巣の外から中の幼虫に産卵するからではないでしょうか。 終齢幼虫は写真にもあるように、巣の外にいることもあるし、巣自体がそれまでのようなしっかり閉じたものではなく、ざっとした荒いものなので(摂食量が多い関係だと思いますが)、近くにまで寄って産卵するのかなと思っています。 できれば産卵管を伸ばして産卵しているところの写真が撮りたいものです。 身近な蝶でもいろいろありますね。
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霧島緑
at 2016-02-07 01:11
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ヒメアカの幼虫に産み付けられた寄生蠅の卵には驚きました。よく発見されました。幼虫の大きさからして、老眼の進んだ私には、肉眼では到底見つかる筈もありません。改めて私が撮影した2頭の幼虫写真を拡大したところ、卵は確認できませんでした。
真冬でも、生命があるところに繁殖行動もあるのですね。自然界はホントに奥が深いです。
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ダンダラ
at 2016-02-07 17:04
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霧島緑さん、寄生蠅の卵は撮影中に気が付いたものもありますけど、大半は写真を整理していて気が付いたものが多いです。
そうそう、あの時の幼虫には卵はありませんでしたね。 あの場所では寄生蠅の姿はなかったように思います。 多かったのは、川を渡る場所の近くでした。 それでヒメアカタテハも存続できるんでしょうね。 |
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