2009年 12月 14日
今日は嵐山町で「第4回蝶類保全シンポジウム オオムラサキ」が開かれたので、午前中の講演を聴いてきた。 講演も面白かったけど、久しぶりにたくさんの蝶仲間に会えて楽しかった。 12月14日から20日までは修学旅行でハワイ、準備が完全には出来ていなかったので早めに講演会を失礼した。 個人的な旅行なら良いけれど、修学旅行となるとそれなりに準備をしてもなにか不安だ。 私は担任ではないので、何も問題なければ気楽な旅行になるのだけど、一人でも病人が出たりするとそれに付き添って病院に行ったりして、旅行を楽しむ気分ではなくなってしまう。 今年はインフルエンザが流行っているので、きっと誰か具合が悪くなるのが出るだろうな。今から気が重い。 (日本から一人、現地で一人看護士がつくので多分大丈夫とは思うけど) 今日も曇天で、講演会場でも写真は撮れなかったのでヨーロッパ旅行の続き。 ------------ 7月25日は、翌26日から息子夫婦がスイスに来るので、自由に動ける今日のうちにスモールアポロ(ミヤマウスバ)を撮影しようとトリフト方向へ行くことにする。 近くの日本語案内所で様子を聞くと、ロープウェイや登山電車を利用した何ちゃってハイキングと違ってかなり本格的な登山になるらしい。 図の①、②と蝶の写真の①、②が対応してます。 下から見上げると、最初の休憩地点のエーデルワィスヒュッテが山の稜線に小さく見える。 あそこまで標高差300m、さらにそれから400m登ることになる。 日本を出発する直前に、トムラウシ山の遭難事故があって、夏山の意外な怖さを知ったのでちょっと緊張する。 もっともスモールアポロが撮影できれば、上まで行かずにすぐに降りてくるつもりだけど。 ツェルマットの街中から狭い道を入ってトリフトヒュッテ方向に上り始める。 登り初めてすぐに、ちょうど写真の白い壁の家の前あたりをアポロが飛んでいる。どうもその下にある小さな空き地が発生地のようだ。 この登山路はいきなり急な登りだけど、程なく広い牧草地になり斜面をアポロが飛んでいるのでここでしばらく粘って撮影することにする。 その時には気がつかなかったけど、アポロの飛んでいるすぐのところに咲いている黄色い花が、食草のベンケイソウの仲間の花のようだ。 また、ここにはmelanargia galathea(シロジャノメ)もたくさんいた。 私は表ばかり撮影していたが、家内は裏面も撮影していて、裏面の美しさにビックリ。翌日以降は意識して撮影するようになった。 また、このシロジャノメにアポロがアタックしている珍しい写真もとれた。 アポロは交尾拒否をするシロジャノメの背中に飛び移って交尾を迫ろうとしたが、間違いに気がついたのかすぐに飛び立った。 タテハでは、melitaea didymaが吸蜜していた。 この♀は一見全く違う模様で、家内が撮ったこの写真を見た時には、変な模様の蛾みたいな蝶がいると思って次からはこれを撮ろうと思って探したくらいだ。 それほど珍しい種類ではないようだ。 ヒカゲチョウの仲間では、maniola jurtinaもいたが、アポロが飛び回る斜面ではなかなかカメラが向かなかった。 ある程度の写真が撮れたので今日の目的であるスモールアポロの生息地である高所を目指す。 ようやくエーデルワイスヒュッテについて一息入れると、眼下にツェルマットの町並みとドム(4545m)が見えてすばらしい眺めだ。 また、黄色のニガナ風の花にはerebia euryaleも来ていた。 こちらはerebia montana だろうか。 ようやく緩やかな登山道に出た。このあたりがスモールアポロのポイントだという。 しばらく待ってみるが、数頭のアポロが遙か上の方の斜面を飛んでいるのが見えるが、とても近づこうと思えるような距離ではない。 まだ発生の初期なのか、数頭のアポロしか見えないので、あきらめて下山を始める。 途中の道では多数のヒメシジミが吸水していたが、中には spialia orbifer とヒメヒカゲの仲間 coenonympha darwiniana も混じっていた。 spialia orbifer は一見するとチャマダラセセリの仲間(pyrgus)に良く似ているけど、調べると微妙に違っている。日本には近似種はいないようだ。 家内が遅れたのでふと振り返ると地面にしゃがみ込んで何か撮影している。 後ろから来た子連れの登山者が親切にも待ってくれている。そのうち「アポロ」と叫ぶ声に大慌てで駆けつけるとスモールアポロが黄色い花で吸蜜していた。 アポロにはない前翅の赤紋が、アポロよりも高山に生息するミヤマウスバの誇りを表しているようだ。 大喜びで撮影。これで急な登山路を上ってきた甲斐があった。(待たされた登山者は迷惑そうな顔をしていたけど) その後最初にアポロを撮影した場所に戻り、午後の生態を観察しながら撮影する。 午前中は♂はあまり止まらず探雌飛翔を繰り返していたが、14時を過ぎるとアザミで吸蜜する個体が多くなるのは、ウスバシロチョウなどと同様だ。 きれいな個体がゆっくりと吸蜜してくれたので、パスト連射にもチャレンジしたが、吸蜜に夢中でなかなか飛び立たず、カメラを構える手が痛くなったが、奇跡的に背景のドムもいい感じでちゃんと写っていた。 このEX-FH20というカシオのカメラは、いつもは作ったような不自然な感じの多い写真しか撮れないのだけど、今回は被写体が大きいので少し引き気味で撮影し、背景も遠くの山だったのがよかったようだ。 下に降りると土曜日と言うことですごい人出。いつものcoopで果物やハム、ワインを買って帰る。
by dandara2
| 2009-12-14 00:12
| 海外
|
Comments(18)
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clossiana at 2009-12-14 07:38
個人的にはアポロよりミヤマウスバへの憧れの方が強いです。この蝶はサハリンにも棲んでいて何だか手が届く範囲にいるような錯覚をしているからです。「サハリンの蝶」によればサハリンでは個体数が少なく幻の存在のようですから一層憧れているのです。そのミヤマウスバですから何とも羨ましい限りです。写真は♀個体のようですが♀の方があでやかですから見させて頂いているだけでため息がでるのをとめられません。
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ダンダラ
at 2009-12-14 13:23
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clossianaさん、ミヤマウスバの方が生息地が限られるし、斑紋もきれいで撮影したい蝶ですよね。
この時は1回だけのチャンスで、時間も5分間もなかったので感激をじっくり味わう暇がありませんでした。 もう少ししたらハワイに向けて学校を出ますが、出発は今晩の21時過ぎ。 団体行動は時間がかかっていやになります。カメハメハアカタテハが撮影できると良いんですが、ダメならせめてオオカバマダラは撮影したいな。
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chochoensis
at 2009-12-14 19:22
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=ミヤマウスバ=ですか!素敵ですね・・・今度はハワイ・・・ますます羨ましいです。ハワイには40年ぐらい前にアメリカからの帰りにすこし寄っただけなので、もう一度行ってみたいです・・・学生さんのお守りも大変ですが、気をつけていってらっしゃい!
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himeoo27 at 2009-12-14 20:41
昨日は、嵐山町で大変お世話になりました。
ハワイへ学生を連れての修学旅行とのこと、当社なら「ご安全に!」 と挨拶するところです。 ヨーロッパアルプスのチョウシリーズも4回目ということなのに全く 中だるみする気配も無く素晴らしい写真の連続ですね! 特に、ヒメシジミとチャマダラセセリの仲間の集団吸水と、一番最後 の飛翔の写真、さすが「ダンダラ」さんという感じです。
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banyan10 at 2009-12-14 20:56
FH20はなかなか思うように撮れていなかったようですが、最後の写真は素晴らしいですね。同じ頃に僕が撮影した槍背景のタカネヒカゲがEX-F1のベストショットなので何か不思議な感じです。
ミヤマウスバのマクロも見事ですね。
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maeda
at 2009-12-15 05:58
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シロジャノメはヨーロッパには4種ほど居たと思います。
これも捜してみると面白いです。フランスだけでも3種居りました。日本には居ない種なので初めは面白いのですが、何処にでも居るので飽きてしまいますね。
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cactuss at 2009-12-15 22:17
シンポジウムでお話していた修学旅行というのはハワイですか。
最近は海外まで、行くんですね。常夏のハワイはいいでしょうね。 ヨーロッパの写真はみなすばらしいですね。特に最後の飛翔写真はヨーロッパの背景がきれいに写ってすばらしい写真ですね。
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thecla
at 2009-12-20 19:05
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シンポジウムお疲れ様でした。まだハワイでしょうか。
スモールアポロは、アポロよりも赤紋が派手目な個体が多いように思いますが、私の時もあまり撮影機会がありませんでした。ちょっと時期がアポロより遅い(発生標高が高いから?)みたいです。 シロジャノメは、何度かアポロに間違えて「この野郎!」と思ったのですが、アポロが間違えるようなら仕方ありませんね(笑) アポロの異種求愛なんて、良く考えたらすごい絵ですね。
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:16
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:21
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himeooさん、シンポジウムではお世話になりました。
ヨーロッパ旅行の方も早めに終了したいと思っていて、もう3回位で何とかするつもりです。 (学校の紀要への投稿も来年早々には取りまとめないといけないので) 集団吸水はあちこちにあったのですが、密には固まっていないのでなかなか撮影は難しいものですね。
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:24
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banyanさん、こういった写真では背景の取り扱いが肝心ですね。
なかなかそう言ったシーンがうまく撮影できないのですが、今までうまく行った写真では背景が離れている場合に納得行く写真が撮れているように思います。 ミヤマウスバは数分しか撮影のチャンスがなく、これが精一杯でした。
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:25
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:27
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:28
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ダンダラ
at 2009-12-21 11:32
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theclaさん、シンポジウムでは色々お世話になりました。
準備が大変だったでしょう。 スモールアポロは、赤紋が写真に写っている意外にも後翅の前縁にあったりして良いですね。 飛びあがった所はすごくきれいなのが写っていたんですが、残念ながら一部が写っていなかったので泣く泣く没写真にしました。 アポロの配偶行動はおっしゃるように珍しい写真だとは思うのですが、出来れば正当な配偶行動も撮れていればと思うのですが、こちらはチャンスがありませんでした。 この場所ではちょっと遅かったのかも知れません。
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yoda-1 at 2009-12-24 12:48
ダンダラさま。
シンポジウムの際に、ヒメオオさんより紹介していただき、名刺交換をさせていただきましたブログ初心者のYODAです。 小さい頃より図鑑だけでみてきたアポロチョウが生で見れると、これは感激に違いないことで、私もこのブログを勉強して、いつかは欧州探蝶旅行にいきたくなりました。 素晴らしい画像のオンパレードで、ため息が止まりません。
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ダンダラ
at 2009-12-29 10:06
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yodaさま
どたばたしていて返事が遅れて申しわけありません。 私もアポロは初めての撮影でしたが、スイスは素晴らしい所で時間とお金にゆとりがあれば何度でも行きたい所です。 ブログ拝見しました。素晴らしい写真がたくさんならんでいますね。 これからもよろしくお願いします。 |
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